「ステーキの提供システム」が特許になる?いきなりステーキのビジネスモデル特許を解説!

「ステーキの出し方」が特許になる——そう聞いたら、多くの人は首をかしげるかもしれません。

特許というのは、新しい技術的ば発明を保護するためのものというイメージがあります。

ところが、いきなりステーキを運営する株式会社ペッパーフードサービスが取得した特許(第5946491号)は、
「ステーキの提供システム」という飲食店のサービス方法そのものを対象にしたものです。

この特許は異議申立によって一度取り消されながら、知財高裁の逆転判決で復活するという波乱の経緯をたどっています。
なぜこの特許が「発明」として認められたのかを、高裁の判決文も参考にしながら解説します!

目次

通常の特許は、新しい機械や化学物質、製造方法など「技術」を対象にします。
一方、ビジネスモデル特許とは、ITシステムやビジネスの仕組み・方法を対象とする特許の総称です。

ポイントは、特許法が保護する「発明」の定義にあります。特許法2条1項では、発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。
つまり、単なるアイデアや商売の方法だけでは特許にならず、何らかの「自然法則の利用」と「技術的な仕組み」が必要になります。

今回のいきなりステーキの特許が注目された理由の一つが、まさにこの「これは発明と言えるのか」という点でした。

  • 出願日:2014年6月4日
  • 登録日:2016年
  • 特許権者:株式会社ペッパーフードサービス

請求項1(抜粋)

お客様を立食形式のテーブルに案内し、お客様からステーキの量を伺い、肉のブロックからカットし、カットした肉を焼き、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステーキの提供システムであって——

テーブル番号が記載された「札」と、カットした肉を計量する「計量機」と、他のお客様の肉と区別する「印し(シール)」を備え、

計量機が計量した肉の量とテーブル番号を記載したシールを出力し、

そのシールが「印し」を兼ねることを特徴とする、ステーキの提供システム。

請求項の内容をかみ砕くと

いきなりステーキの店舗に行ったことがある方なら、このシステムはそのままお馴染みの体験です。

  1. 来店したお客を立食テーブルに案内し、テーブル番号が書かれた「札」を渡す
  2. お客の希望するグラム数に合わせて肉のブロックを目の前でカット
  3. カットした肉を計量機で計り、「グラム数+テーブル番号」が印字されたシールを出力
  4. そのシールを肉に貼り付ける(これが「他のお客様の肉と区別する印し」を兼ねる)
  5. 焼いた肉をシールのテーブル番号のお客のところへ届ける

要するに「グラム数とテーブル番号を記載したシールを計量機で出力し、それを肉に貼ることで他のお客様の肉と混同しない仕組み」が、この特許の核心です。

この特許は登録後、第三者から特許異議申立(異議2016-701090号)が行われました。
その申立理由は「産業上利用可能な発明に該当しない」というもの。つまり「これは特許法上の『発明』ではない」という主張です。

特許庁はこの申立を認め、特許取消決定を下しました。
特許庁の判断は、「札・計量機・シールは単に道具として用いることが特定されるに過ぎず、人間の精神活動を主体とした方法であるため自然法則を利用した技術的思想の創作とは言えない」というものでした。

ところが、ペッパーフードサービスが知財高裁に訴訟を提起したところ、2018年10月17日、知財高裁第2部(森義之裁判長)が特許庁の取消決定を覆す判決を下します。

知財高裁の判断

「本件特許発明は、札・計量機・シールという特定の物品または機器を、他のお客様の肉との混同を防止して課題を解決するための技術的手段とするものであり、全体として『自然法則を利用した技術的思想の創作』に該当する」

特許庁が「ただの道具の使用」と見ていたのに対し、知財高裁は「混同防止という技術的課題を解決するための技術的手段」と判断したわけです。差戻し後の異議審理でも最終的に特許維持となり、この特許は有効として確定しました。

率直に言うと、この特許の権利範囲はかなり限定的です。請求項1には多くの具体的な要件が並んでいます。

  • 立食形式のテーブルであること
  • 計量機がシールを出力すること
  • そのシールがグラム数とテーブル番号の両方を記載していること
  • そのシールが肉に貼る印しを兼ねること

逆に言えば、座席式の店にしたり、シールではなくタグを使ったり、テーブル番号と重量を別々に管理したりするだけで、この特許の範囲を外れる可能性があります。
競合他社が「いきなりステーキと似た業態」を展開しようとする際に、この特許でがっちり守れるかというと疑問です。

一方で、この特許の意義はむしろ別のところにあるのではないかと考えています。

まず、出願したのが2014年、つまりいきなりステーキが注目を集め始めた初期の段階です。
競合他社が同じビジネスモデルに参入しようとした場合、特許の内容・範囲に関わらず、「特許がある」という事実そのものが抑止力になります。競合が侵害リスクを見極めるのに時間とコストがかかるからです。

また、知財高裁がこの特許を「発明に該当する」と認めたことは、ビジネスモデル特許の実務において大きなインパクトを与えました。
人間が主体のサービス方法でも、技術的手段として機器を組み合わせれば特許になりうる」という先例になったからです。

権利範囲は狭くとも、「出願・登録したこと」自体にビジネス上の価値があった、という点でいきなりステーキの特許戦略は巧みだったと言えるかもしれません。

「ステーキの提供システム」が特許になったと聞くと、「サービスの流れまで特許になるの?」と驚く方も多いかもしれません。

しかし、いきなりステーキの特許(第5946491号)は、単なる接客方法や営業方法ではなく、「札・計量機・シール」を組み合わせることで、注文した肉を他のお客様のものと取り違えないという課題を解決する技術的な仕組みが評価された発明でした。

一度は特許庁の異議決定によって取り消されたものの、知財高裁は「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当すると判断し、最終的に特許は維持されています。
この判決は、ビジネスモデル特許が認められる範囲を考えるうえでも重要な事例となりました。

権利範囲自体は決して広いとはいえませんが、競合他社への牽制や、自社のビジネスモデルを知的財産として保護しようとする姿勢を示した点で、大きな意味のある特許だったと言えるでしょう。

「技術」と聞くと最先端の機械や装置を思い浮かべがちですが、身近なサービスの中にも、技術的な工夫によって特許として保護されるものがあります。
もしかしたら、皆さんが何気なく使っているサービスの中にも、特許になる可能性があったものが潜んでいるかもしれませんね。

それでは、今回もお付き合いいただきありがとうございました!

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この記事を書いた人

K-POPや韓国オーディション番組が好きな管理人です!

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