任天堂がパルワールドを訴えた3つの特許とは?内容をわかりやすく解説!

前回の記事では、任天堂・ポケモン社とポケットペアの特許権侵害訴訟の経緯を時系列で整理しました。

今回は、その訴訟で実際に争点となっている3件の特許について、内容をできるだけかみ砕いて解説していきます。

目次

特許を理解するうえで最低限知っておきたいのが「請求項(クレーム)」という概念です。

特許には必ず「請求の範囲」という欄があり、
そこに「自分はこの仕組みを発明した。だから他の人は勝手に使わないでほしい」
という内容が書かれています。これが請求項です。

特許権侵害が成立するには、この請求項に書かれた要素をすべて満たす必要があります。
逆に言えば、ゲームの動作が請求項の要件を1つでも外れれば、原則として特許侵害にはなりません。

ポケットペアが後述の仕様変更を行ったのも、この考え方に基づく対応です。
請求項に書かれた要素の内、仕様変更が容易な要素について仕様変更をすることで、特許侵害にならないようにしたということですね。

簡単に言うと、「捕獲アイテムと仲間キャラクターを「同時に投げる」仕組み」についての発明です。

  • 出願日:2024年7月30日
  • 登録日:2024年8月27日

請求項1(抜粋)

捕獲アイテムが選択されている場合に捕獲アイテムを放つために構える動作を、
戦闘キャラクタが選択されている場合に戦闘キャラクタを放つために構える動作を、プレイヤキャラクタに行わせ、
方向入力に基づいて照準方向を決定させ……
捕獲成功判定が肯定された場合は命中したフィールドキャラクタをプレイヤの所有状態に設定し、
戦闘キャラクタが戦闘可能な場所に放たれた場合は戦闘を開始させる

請求項1をかみ砕くと

「捕獲アイテム」と「戦闘キャラクター」を、同じボタン操作・同じ照準で投げ分けられるシステムについての請求項です。
ポケモンでいえばモンスターボールを投げるボタンとポケモンを繰り出すボタンが同一の操作系統にまとまっており、照準を合わせてどちらかを選んで放つ、という動作です。

この特許についての所感

この特許の請求項1が要求している構成要素はかなり具体的です。

・複数種類の捕獲アイテム
・複数種類の戦闘キャラクター
・照準方向の決定
・それぞれを放つ動作

といった要件をすべて満たす必要があります。

特許の出願や維持には大きなお金がかかります。
そのため、ここまで構成要素を具体的にした、狭い権利範囲の特許を出願・取得することは稀です。
また、権利範囲が具体的である分、似た仕組みでも要件の一部を変えれば簡単に回避できてしまうというデメリットもあります。

それにもかかわらず、このような請求項で任天堂が権利化していることを考えると、幅広いゲームシステムを保護することよりも、特定のゲームシステムを念頭に置いて権利化を目指した可能性も考えられます

実際、本件ではポケットペアが2024年11月のアップデート(v0.3.11)で「照準を合わせて投げる」動作を削除しており、この特許の構成要件を外すような仕様変更を行っています。

このような経緯も踏まえると、この特許はやはりパルワールドのゲームシステムを強く意識して出願された可能性が高いのではと感じます。

簡単に言うと「捕獲アイテムへの「照準合わせ」と「捕獲率表示」の仕組み」についての発明です。

  • 出願日:2024年2月26日(原出願日:2021年12月22日)
  • 登録日:2024年5月22日

請求項1(抜粋)

操作入力が行われた場合に、照準方向をフィールド上のフィールドキャラクタに向けさせるとともに、

捕獲成功判定の肯定判定し易さを示す指標(第1の指標)を表示させる

かみ砕くと

操作入力によって照準をフィールド上のキャラクターに向け、そのキャラクターを「どれくらい捕まえやすいか」を示す指標(捕獲率ゲージのようなもの)を表示するシステムです。
ポケモンでいえば「レジェンズ アルセウス」などで、モンスターボール等を構えたときに捕獲率のインジケーターが表示される仕組みに相当します。

この特許についての所感

特許①と比較すると、こちらの請求項1はシンプルな構成です。
「照準を向ける」と「捕獲率を示す指標を表示する」の2点を中心としており、権利範囲は比較的広いと感じます。

一方で、権利範囲が広い分、他の既存のゲームなどを先行技術として、この特許は無効だと主張しやすい側面もあります。
実際に、「捕獲率ゲージ的な表示」は『ARK: Survival Evolved』など既存ゲームにも類似の概念が存在しています。

また、この特許の関連出願に対して日本特許庁から拒絶理由通知が出ていることからも、類似する先行技術が存在すると特許庁が判断している可能性はありそうです。

簡単に言うと「所有キャラクターに「乗って移動する」仕組み」についての発明です。

  • 出願日:2024年3月5日(原出願日:2021年12月22日)
  • 登録日:2024年7月26日

請求項1(抜粋)

プレイヤキャラクタが所有するキャラクタのうち搭乗可能なキャラクタが選択されて搭乗指示が行われた場合、
プレイヤキャラクタを当該キャラクタに搭乗させて移動可能な状態にさせ、
空中にいるときに操作入力が行われた場合は空中移動可能な搭乗キャラクタに乗り換えて空中を移動可能な状態にさせる

かみ砕くと

プレイヤーが所持しているキャラクターの中から「乗る方法」を選んで搭乗し、地上・空中・水上など環境に応じて異なる移動ができるシステムです。

ポケモンでいえば『レジェンズ アルセウス』のライドポケモン、つまりポケモンの背中に乗って空を飛んだり水面を走ったりする、機能に相当します。

また従属項の請求項3では、「所定の高さや速度で空中から落下した場合にダメージを受ける」処理も追加で記載されています。

【所感】権利範囲について

3件の中で最も根幹的な「移動システム」を対象にしており、システムの仕様変更することによる回避が最も難しい特許です。

請求項1だけを見ると「所有キャラに乗って移動できる」という構成が核心ですが、地上・空中・水中の切り替えも含めた記載になっているため、ライドシステム全体を幅広くカバーしています。

一方で、「乗り物に乗って移動する」というゲームメカニクス自体は古くからあるため、先行技術の観点から有効性を争う余地は残っています。
ポケットペア側が先行技術の一つとして挙げた『ARK: Survival Evolved』には、同様に生き物に乗って移動するシステムが実装されており、この特許の争点でも焦点になりそうです。

改めて3件を並べると、任天堂が守ろうとしているのは「捕獲して仲間にし、乗って移動する」というポケモンシリーズを構成するシステム全体だということがわかります。

特許番号保護している仕組み
第7545191号捕獲アイテムと戦闘キャラを同時に照準して投げるシステム
第7493117号照準合わせ+捕獲率ゲージ表示のシステム
第7528390号所有キャラに搭乗して移動するシステム

3件はいずれも原出願日が2021年12月22日で、同一の出願を分割して権利化したパテントファミリー(関連のある特許)です。
パルワールドの発売(2024年1月)後に分割出願・早期審査を活用して素早く登録まで持っていった経緯については、前回の記事で詳しく解説しています。

ポケットペアは2024年11月の仕様変更で特許①・②への侵害については回避を図りましたが、特許③のライドシステムはゲームの根幹に関わるため対応が難しく、現在も争点として残っています。

2026年11月の裁判所の見解表明が次の大きな節目になりそうですね。

※本記事は2026年6月時点の情報をもとにしています。訴訟は係属中のため、今後の進展により内容が変わる可能性があります。

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この記事を書いた人

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