『パルワールド』特許訴訟を時系列で解説!任天堂vsポケットペアの争点と今後の見通し【2026年6月】

2024年9月に始まった任天堂・ポケモン社とポケットペアとの特許権侵害訴訟
すでに開始から2年近くが経ち、直近の展開を見ると、当初とは状況が大きく変わってきています。

今回は、この訴訟がどのような経緯をたどってきたのかを時系列で整理するとともに、今後どのような決着を迎えるのかを現役知財部員の管理人が考察していきます!

目次

事の発端は、2024年1月に発売された『パルワールド』です。

生き物「パル」を集めて育成・バトル・労働させるオープンワールドサバイバルゲームとして発売されると、わずか5日半で800万本を売り上げ、翌2月には全プレイヤー数2,500万人を突破する異例のヒットとなりました。

一方で、発売直後からSNSでは「ポケモンに似すぎている」という声が相次ぎました。
特に「パル」のキャラクターデザインについて、『ポケットモンスター』シリーズとの類似性を指摘する投稿が数多く見られます。

その後、株式会社ポケモンが「他社ゲームへのポケモンのいかなる利用も許諾していない」とコメントを発表したことで、この議論はさらに注目を集めました。

当時SNSなどで話題になっていたのは、主にキャラクターデザインの類似性であり、「著作権」「商標権」が中心的なテーマとなっていました。

しかし、半年後に任天堂・ポケモン社が実際に提起したのは、
キャラクターデザインではなく、ゲームシステムに関する特許権侵害訴訟でした。

なぜ著作権ではなく特許権だったのか

なぜ任天堂は著作権、商標権ではなく特許権での侵害を主張したのでしょうか。

一般に、キャラクターデザインが似ているというだけで著作権侵害が認められるハードルは高いとされています。
一方で、ゲームシステム等の技術的な内容については一定の要件を満たせば特許権侵害を立証することが出来ます。

任天堂は以前にも株式会社コロプラの白猫プロジェクトに対して特許権侵害の訴訟を起こしており、任天堂に有利な形で和解をしています。
この経験から、比較的ハードルの高い著作権ではなく、これまでに経験のある特許権での訴訟を選択したのではないでしょうか。

2024年9月18日、任天堂とポケモン社はポケットペアを相手取り、
任天堂の所有する3件の特許(特許第7545191号・第7493117号・第7528390号)について、東京地方裁判所へ特許権侵害訴訟を提起したと発表しました。

争点となったのは、モンスターの捕獲やキャラクター召喚といったゲームシステムに関する特許です。

任天堂側は、ゲームの差止めと損害賠償(当初請求額1,000万円)を求めています。

任天堂の「特許網」はなぜこれほど早かったのか

ここで注目したいのが、争点となった3件の特許の登録時期です。

いずれも2024年5〜8月、つまり『パルワールド』発売から約7か月という短期間で登録されています。

特許出願日と登録日
特許第7545191号出願2024年7月30日 → 登録2024年8月27日
特許第7493117号出願2024年2月26日 → 登録2024年5月22日
特許第7528390号出願2024年3月5日 → 登録2024年7月26日

おそらく、早期審査制度という通常の審査制度よりも短い期間で特許の審査(出願した特許が有効か無効かを特許庁に判断してもらうこと)を受けられる制度を利用して、短期間で登録まで進めたのではないでしょうか。

もともと出願を予定していた技術を偶然今回の訴訟に利用したというよりも、
『パルワールド』を念頭に置いて、短期間で特許の権利化まで進めた可能性が高いように思われます。

ポケットペアはこの訴訟に対し「運営・提供は中断しない」と早々に表明し、本格的に争う姿勢を見せました。
一方で2025年5月には、ポケットペアが訴訟への予防的措置として「パルスフィアを投げて召喚する」機能を一部削除するなど、ポケットペアの側のゲーム仕様へ影響が出ている点も見られます。

ポケットペアから任天堂への反論の軸は「先行技術」の主張です。

ポケットペア側は、任天堂が訴訟で主張している3件の特許について、これらの特許の出願時に「すでに似た仕組みは存在していた」と反論しています。

具体的には、『ARK: Survival Evolved』『ファイナルファンタジー』『モンスターハンター』『ゼルダの伝説』や、それらのMODなどを先行技術として挙げ、当該特許について特許権は本来認められるべきではなかったと主張しています。

これに対して任天堂は、2025年9月に「MODは単体で成立しないため先行技術とはみなされない」と反論をしましたが、改造ゲーム(MOD)を先行技術として認めない理屈には、知財業界内では「特許の運用として行き過ぎではないか」という声が多いように感じました。

任天堂は、現在訴訟で主張している既に特許査定済み(権利として特許庁から正式に認められている)3件の特許とは別に、これらと関連する特許についても複数の出願を行っています。

そして2025年後半から2026年にかけて、それらの関連特許出願に対し、日本・米国の特許庁から相次いで拒絶理由通知などの判断が示されました。

時期出来事
2025年9月米国特許庁が「サブキャラ召喚&戦闘」に関する特許出願を特許査定
2025年10月日本特許庁が「モンスターの捕獲」に関する特許出願を先行技術を理由に拒絶理由通知
2025年11月米国特許庁長官が「サブキャラ召喚&戦闘」に関する特許査定への再審査を異例の直接命令
2026年4月米国特許庁が「サブキャラ召喚&戦闘」「キャラクター召喚」に関する特許出願を先行技術を理由に拒絶理由通知
2026年5月日本特許庁が「タッチスクリーン関連」の分割出願に拒絶理由通知

これらは現在の訴訟で侵害が主張されている3件の登録特許とは別の出願です。
そのため、今回の拒絶理由通知が直ちに現在の訴訟へ影響するわけではありません。

もっとも、関連出願で示された審査内容は、将来的に登録済み特許の有効性が争われた際の判断材料となる可能性もあります。
そのため、任天堂の特許戦略全体を見る上では、今回の審査結果も注目すべき動きと言えそうです。

海外メディア「games fray」の分析によれば、仮に任天堂が勝訴したとしても、最終的な損害賠償額は最大でも500万円程度にとどまる可能性があるとされています。

その理由として挙げられているのは、次の3点です。

  • 争点となるのが『パルワールド』の旧バージョンに限られること
  • 賠償対象が日本国内での販売分のみであること
  • 特許成立後、ポケットペアが比較的早い段階でゲームシステムを変更しており、侵害期間が短いこと

裁判所では、2026年10月1日に証拠提出期日、11月9日に見解表明が予定されており、ここが今後の大きな節目となりそうです。

任天堂が当初請求した損害賠償額は1,000万円でした。
もちろん請求額だけで訴訟の目的を判断することはできませんが、任天堂ほどの企業規模からすれば決して大きな金額ではありません。

そのため、この訴訟は賠償金の獲得そのものよりも、「自社の特許権については必要に応じて権利行使を行う」という姿勢を示す意味合いも大きかったのではないかと考えています。

ここまでの経緯を見ると、訴訟開始当初と比べて状況には少しずつ変化が生じています。

任天堂が追加で出願している関連特許については、日米の特許庁から拒絶理由通知などが出されており、特許戦略全体としては順風満帆とは言えない状況です。

一方で、現在訴訟で侵害が主張されている3件の特許は、いずれもすでに登録済みです。
そのため、関連出願に拒絶理由通知が出たからといって、現在の訴訟が直ちに不利になるわけではありません

今後の焦点は、

  • 任天堂が持つ3件の特許が、今後も有効な特許として認められるのか
  • 『パルワールド』のゲームシステムが、その特許を侵害していると裁判所が判断するのか

という2点になるでしょう。

ネット上では「SLAPP訴訟だ」「インディー潰しだ」という批判がある一方で、
「知的財産権を守るためには当然の権利行使だ」と評価する声もあり、意見は大きく分かれています。

次回は、この訴訟で実際に争点となっている3件の特許について、できるだけ分かりやすく解説していきます。

任天堂とポケットペアによる『パルワールド』訴訟は、「ポケモンに似ている」という話題から始まりましたが、
実際に争われているのはキャラクターデザインではなく、ゲームシステムに関する特許権です。

記事内でも紹介したように、現在訴訟で争われている3件の特許はすでに登録済みですが、その関連特許については日米の特許庁から拒絶理由通知などが出ており、特許戦略を巡る動きにも注目が集まっています。

また、ポケットペアは訴訟提起後にゲームシステムの一部を変更しており、裁判の影響が実際のゲームシステムにも及んでいることが分かります。

今後は、登録済みの3件の特許がどのように評価されるのか、そして『パルワールド』がそれらの特許を侵害していると裁判所が判断するのかが、大きなポイントとなりそうです。

※本記事は2026年6月28日時点の情報をもとにしています。訴訟は係属中のため、今後の進展により内容が変わる可能性があります。

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この記事を書いた人

K-POPや韓国オーディション番組が好きな管理人です!

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